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評価の考え方2026-08-29 更新

股関節痛の鑑別と臨床推論 — 鼠径部痛・殿部痛・大腿部痛をどう見分けるか

新人PTと先輩PTの対話形式で、股関節痛の部位別(鼠径部痛・殿部痛・大腿部痛)の考え方と、評価の入口で確認すべきレッドフラッグを整理しました。

股関節痛の症例で、こんな経験はありませんか。

  • 「股関節が痛い」と言われても、どこから評価を始めればいいか迷う
  • 鼠径部痛・殿部痛・大腿部痛のどれも「股関節の痛み」として一括りに考えてしまう
  • 変形性股関節症ばかりを疑ってしまい、他の病態を見落とす
  • 腰椎や仙腸関節が原因のこともあると分かっていても、切り分け方が分からない

股関節は骨盤・腰椎・大腿と隣接しており、痛みの部位だけでは原因組織を絞り込めません。この記事では、新人PT・水野あかりと先輩PT・佐伯直人の対話を通じて、股関節痛の鑑別と評価の入口を整理します。

新人PT・水野あかり

先輩、股関節が痛いという方が続けて来られたんですけど、正直「股関節痛」って一括りにしてしまっていて…。

先輩PT・佐伯直人

股関節痛は、痛む場所によって考えるべき組織がかなり変わるんだ。まず大きく3つのエリアに分けて考える癖をつけるといいよ。

新人PT・水野あかり

3つ、ですか?

先輩PT・佐伯直人

鼠径部痛・殿部痛・大腿部痛。同じ「股関節痛」でも、この3つは原因が違うことが多い。

部位別に考えられる代表的な病態

痛みの部位代表的に疑う病態(一部)見落としやすい別の原因
鼠径部痛変形性股関節症初期、FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)、腸腰筋関連の痛み鼠径ヘルニア、恥骨関連の痛み
殿部痛深臀部症候群、梨状筋関連の痛み、坐骨結節部の痛み腰椎由来の関連痛、仙腸関節由来の痛み
大腿部痛(外側)大転子部痛症候群、中殿筋・小殿筋の腱障害腸脛靭帯由来の痛み、腰椎由来のしびれとの混同

新人PT・水野あかり

こうやって整理すると、同じ「股関節痛」でも見るべきものが全然違いますね。

先輩PT・佐伯直人

そう。だから最初に「どのエリアの痛みか」を明確にするだけで、鑑別の幅がぐっと絞れる。
代表的なレッドフラッグ夜間も軽減しない痛み原因不明の体重減少がんの既往進行する脱力・しびれ
代表的なレッドフラッグの例

先輩PT・佐伯直人

もちろん、部位の整理をする前に確認しておきたいのは、これまでの記事でも扱ってきたレッドフラッグ。安静時も持続する痛み、原因不明の体重減少、がんの既往、外傷後で骨折が疑われる所見。これらがあれば、部位別の鑑別より先に、医療機関への相談・受診の必要性を検討する。

新人PT・水野あかり

股関節痛でも同じなんですね。

先輩PT・佐伯直人

うん、レッドフラッグの考え方はどの部位でも共通。

架空症例で見る、鑑別の進め方

架空の症例で考えてみます(実在のケースではありません)。40代・女性。3か月前から右の鼠径部に痛みがあり、長時間の歩行や階段昇降で増悪する。股関節の屈曲・内旋で痛みが誘発される。

新人PT・水野あかり

これは変形性股関節症でしょうか?

先輩PT・佐伯直人

その可能性はあるけど、決めつけるのはまだ早い。屈曲・内旋で誘発される痛みは、FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)でも典型的に見られる所見だから。

新人PT・水野あかり

同じ所見でも、複数の病態が候補になるんですね。

先輩PT・佐伯直人

そう。年齢や画像所見だけで決めつけず、可動域制限のパターン、痛みの発症様式(急に始まったか、徐々にか)、日常生活のどの動作で悪化するかを組み合わせて考える。

新人PT・水野あかり

じゃあ、この時点では「変形性股関節症かもしれないし、FAIかもしれない」という状態で進めていいんですか?

先輩PT・佐伯直人

それでいい。どちらも評価仮説として残したまま、次の評価で絞り込んでいく。決めつけないことが、この時点では一番大事だよ。

股関節痛ではどう整理するか

新人PT・水野あかり

股関節は腰椎とも近いので、余計に鑑別が難しく感じます。

先輩PT・佐伯直人

そこは実際、臨床推論でつまずきやすいポイントだよ。股関節だけを見て、腰椎や仙腸関節由来の可能性を検討しないまま評価を進めてしまうケースがある。

新人PT・水野あかり

股関節に限らず、こういう「複数部位にまたがる鑑別」を整理するとき、クリニカルシンカーはどう役立ちますか?

先輩PT・佐伯直人

症例情報を入力すると、股関節局所の病態だけでなく、見落とされやすい病態も含めて幅広く評価仮説を挙げてくれる。決めつけずに候補を残しておく、という今日話した考え方が土台になっているんだ。

新人PT・水野あかり

一人で考えていると、どうしても最初に浮かんだ病態に引っ張られがちなので、助かりますね。

先輩PT・佐伯直人

そう。次に何を確認すべきかを考える手がかりにもなるよ。

評価の優先順位をどう組み立てるか

評価の優先順位づけの3ステップまず除外レッドフラッグ確認広く鑑別見落とされやすい病態も含める絞り込む実際の所見で優先順位づけ
評価の優先順位づけの流れ

先輩PT・佐伯直人

レッドフラッグを確認したら、まず発症様式(外傷の有無、急性か慢性か)を整理する。次に痛みの部位(鼠径部・殿部・大腿部のどこが主体か)。最後に、可動域制限のパターンや動作時痛の特徴で、疑う組織を絞り込む。

新人PT・水野あかり

部位の整理→発症様式→可動域制限のパターン、という順番ですね。

先輩PT・佐伯直人

うん。焦って1つの病態に決めつけず、この順番で情報を積み重ねていくのが基本の型だよ。

まとめ

股関節痛は、痛みの部位(鼠径部痛・殿部痛・大腿部痛)によって疑うべき組織が大きく異なります。レッドフラッグの確認を前提としつつ、部位別の整理→発症様式→可動域制限のパターンという順番で評価仮説を組み立てることで、1つの病態への決めつけを避けられます。

よくある質問

Q. 股関節痛で、最初に確認すべきことは何ですか?

A. まず安静時も持続する痛みや原因不明の体重減少、がんの既往といったレッドフラッグの有無を確認します。そのうえで、痛みの部位が鼠径部・殿部・大腿部のどこが主体かを整理すると、疑うべき組織を絞り込みやすくなります。

Q. 鼠径部痛があれば、変形性股関節症と考えてよいですか?

A. 鼠径部痛は変形性股関節症でよく見られますが、FAI(大腿骨寛骨臼インピンジメント)や腸腰筋関連の痛みでも似た所見が出ることがあります。年齢や画像所見だけで決めつけず、可動域制限のパターンや発症様式もあわせて評価仮説を組み立てることが大切です。

参考

  • 股関節・鼠径部痛の国際的な分類の枠組み(ドーハ合意など)スポーツ医学領域で広く知られる鼠径部痛の分類枠組みを参考に構成

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