評価の考え方 ・ 2026-08-24 更新
肩関節痛、最初に何を評価するか — 新人PTと先輩の対話でたどる評価の優先順位
新人PTと先輩PTの対話形式で、肩関節痛の評価で最初に確認すべきレッドフラッグと、評価の優先順位を整理する考え方をまとめました。
新人PT・水野あかり
先輩、次の患者さんなんですけど、肩が痛いっておっしゃっていて…とりあえず可動域と筋力から測ろうと思うんですけど、それでいいですか?
先輩PT・佐伯直人
ちょっと待って。可動域や筋力を測る前に、まず確認したいことがあるんだ。
新人PT・水野あかり
確認したいこと、ですか?
先輩PT・佐伯直人
うん。肩関節痛の中には、整形外科的な評価だけでは対応できない病態が紛れていることがある。だから局所の評価に入る前に、レッドフラッグを確認する癖をつけておくといいよ。
新人PT・水野あかり
レッドフラッグ…体重減少とか、そういうやつですよね。
先輩PT・佐伯直人
そうそう。たとえばこんな感じ。
先輩PT・佐伯直人
安静時や夜間も持続して体位を変えても軽減しない痛み、原因不明の体重減少、発熱、倦怠感、がんの既往、外傷後で骨折が疑われる、急激な筋力低下、しびれの範囲が広がっていく…こういう所見があったら、局所の評価より先に、医療機関への相談・受診の必要性を検討する。
新人PT・水野あかり
なるほど…今日の患者さんは、そのへんは大丈夫そうでした。
先輩PT・佐伯直人
その「大丈夫そう」が、実は危ないんだよね。ちゃんと聞いた?それとも、聞いてないだけ?
新人PT・水野あかり
……全部は聞けてないです。
先輩PT・佐伯直人
そこが今日いちばん大事な話。聞いていない項目を「陰性」として扱っちゃダメなんだ。
先輩PT・佐伯直人
「聞いていない」と「聞いたけど無かった」は全然違う。ここを混同すると、あとで仮説を見直すときに、何を根拠に除外していたのか分からなくなる。
新人PT・水野あかり
たしかに…「特記事項なし」ってメモしちゃうと、あとで見返しても区別つかないですね。
先輩PT・佐伯直人
そう。だから未確認は未確認と、はっきり書いておく。
評価の優先順位をどう組み立てるか
新人PT・水野あかり
レッドフラッグを確認したあとは、どう進めればいいんですか?
先輩PT・佐伯直人
優先順位はこんな流れで組み立てるといいよ。
先輩PT・佐伯直人
まず発症様式(外傷の有無、急性か慢性か、反復動作との関連)を整理する。次に疼痛の性質(夜間痛の有無、動作時痛か安静時痛か、放散痛の範囲)。最後に可動域制限のパターン(自動運動と他動運動の両方で制限があるか、方向性があるか)で、疑う組織を絞り込む。
架空症例で一緒に考えてみる
新人PT・水野あかり
じゃあ、さっきの症例で一緒に考えてもらえますか?架空の症例です。50代の男性で、3か月前から右肩が痛くて、棚の物を取る動作で悪化するそうです。あと、夜中に痛みで目が覚めることがあるとも言っていました。
先輩PT・佐伯直人
整形外科的テストは?
新人PT・水野あかり
Neer testとHawkins-Kennedy testが陽性で、Empty can testは軽度陽性、外旋の筋力もちょっと落ちてました。
先輩PT・佐伯直人
僧帽筋の筋力左右差とか、肩甲骨の動きは見た?
新人PT・水野あかり
……そこは、見てないです。
先輩PT・佐伯直人
うん、それでいい。「見てない」と自分で分かっているのが大事。じゃあ整理してみよう。
新人PT・水野あかり
テストが3つとも陽性で筋力低下もあるので、肩峰下でのインピンジメント(腱板・肩峰下滑液包の機械的圧迫)が中心じゃないかと思います。
先輩PT・佐伯直人
いいね。実際に評価した所見が複数そろっているから、そこを評価の中心に据えるのは妥当。でも、それだけで終わらせない。
新人PT・水野あかり
夜間痛、ですか?
先輩PT・佐伯直人
そう。機械的な圧迫だけだと、夜間痛の説明としては弱いことがある。だから関節包の炎症性変化みたいな別の要因も、候補として残しておく。どちらか一方だけで片付けない。
新人PT・水野あかり
僧帽筋とか肩甲骨の動きは……
先輩PT・佐伯直人
確認していないだけで、「無かった」わけじゃない。可能性は残したまま、次の評価予定に入れておく。次は頸椎由来の関連痛を除外するために、頸部の可動域も見ておこう。
新人PT・水野あかり
「実際に確認した所見で優先順位をつけること」と「確認していない所見を除外に使わないこと」、両方やるってことですね。
先輩PT・佐伯直人
その通り。それが評価仮説を組み立てるときの基本の型だよ。
まとめ
肩関節痛の評価は、可動域テストや整形外科的テストに入る前の「除外すべきことの確認」と「評価の優先順位づけ」で、その後の流れが大きく変わります。特に、確認していない項目を「陰性」として扱わない意識は、症例を振り返るときにも役立ちます。
よくある質問
Q. 肩関節痛のレッドフラッグを見落としにくくするにはどうすればよいですか?
A. 夜間痛の性質、体重減少や発熱の有無、がんの既往、外傷歴、神経症状の有無を、評価の入口で毎回確認する型を持つことが有効です。聞いていない項目は「陰性」ではなく「未評価」として区別して記録します。
参考
- 肩関節疾患におけるレッドフラッグの考え方(整形外科・理学療法領域で広く共有されている一般的な整理をもとに構成)
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