← コラム一覧

臨床推論の考え方 ・ 2026-10-10 更新

臨床推論は、どんな流れで進むのか — 肩の架空症例で6ステップを追う

新人PTと先輩PTの対話形式で、58歳・肩が上がらない架空症例を使い、臨床推論の流れ(安全確認→候補を広げる→支持と不足を並べる→次の評価を選ぶ→更新→見立て)を順番に追います。

Therapist for Life(セラピストフォーライフ)のロゴ

クリニカルシンカーは、セラピストの教育を続けてきた団体が運営しています

350以上の施設のセラピストが、クリニカルシンカーで臨床推論を使っています

研修事業
15年以上
研修事業
開催したセミナー
3,000回以上
開催したセミナー
一流講師
200名以上
一流講師
研修を届けた延べ人数
15万人
研修を届けた延べ人数

「臨床推論」という言葉は聞くけれど、先輩の頭の中で実際に何が起きているのかは、なかなか見えません。

  • 評価の結果は出そろっているのに、そこから先の「考え方」の流れが分からない
  • 所見を見た瞬間に病名が浮かび、そのまま決め打ちしてしまう
  • 先輩に「なぜそう考えたの?」と聞かれて、うまく説明できない
  • 検査はたくさんやったのに、結局どれが決め手だったのか分からない

この記事では、肩の架空症例を使って、臨床推論が「どんな順番で・何を材料に」進んでいくのかを、新人PT・水野あかりと先輩PT・佐伯直人の対話で追います。病名を当てる記事ではありません。「次に何を確認し、その結果で考えがどう変わるか」という流れを見ていただくための記事です。

新人PT・水野あかり

先輩、臨床推論って、結局は経験を積んだ人の「勘」なんじゃないですか?

先輩PT・佐伯直人

勘に見えるけど、実は順番がある。その順番を言葉にしておくと、新人のうちから真似できるんだ。

新人PT・水野あかり

順番、ですか。

全体像 — 臨床推論は6つのステップで回る

臨床推論の流れ(6つのステップ)① 安全確認レッドフラッグを先に確認する② 候補を広げる病名を1つに決めず、複数の候補を並べる③ 支持と不足を並べる候補ごとに「支持する所見」「足りない所見」を分ける④ 次に確認する評価を選ぶ候補を分けられる所見から確認する⑤ 結果で候補を更新する③に戻る。この往復で絞り込む⑥ 見立てと介入の方向性根拠・リスク・未確認の点をそろえて整理する
臨床推論の流れ(今回追うステップ)

先輩PT・佐伯直人

今日はこの6ステップで、1つの症例を最後まで追ってみよう。ポイントは、③〜⑤をぐるぐる回すこと。1回で答えを出そうとしない。

新人PT・水野あかり

③から⑤の往復、ですね。

架空症例 — 58歳、肩が上がらない

架空の症例で考えます(実在のケースではありません)。

58歳。数か月前から、じわじわと肩が上がりにくくなってきた。きっかけになるような外傷はない。他動的にも外旋が大きく制限されており、どの方向に動かしても他動の可動域が全体的に狭い。

新人PT・水野あかり

先輩、これは五十肩(凍結肩)ですよね? 外旋が固いですし。

先輩PT・佐伯直人

その「ですよね」が出たところで、いったん止まろう。病名が浮かぶのは悪いことじゃない。でも、浮かんだ病名は「答え」じゃなくて「最初の仮説」として扱う。

新人PT・水野あかり

仮説として扱う…。

CLINICAL THINKER

この記事のような整理を、クリニカルシンカーなら自分の症例でできます

クリニカルシンカーは、理学療法士・作業療法士のための臨床推論支援AIです。 症状や所見を入れていくと、鑑別の候補と「次に確認すると鑑別が進む評価」が並びます。 答えを出すAIではなく、評価の優先順位を整理するためのAIです。実際の画面はこちらです。

クリニカルシンカーの鑑別候補の画面。支持された所見とまだ足りない所見が候補ごとに並ぶ
鑑別候補ごとに「支持された所見」と「まだ足りない所見」を表示
クリニカルシンカーの次に確認する評価の画面。他動外旋ROMや夜間痛などを選ぶと候補が更新される
次に確認すると鑑別が進む評価を提示。結果を選ぶと候補が更新される

※ 画面はアプリの実際の出力の一部で、肩の架空症例のデモです(現在、この機能は肩の症例に対応しています)。 表示される鑑別候補は未監修の試作データによるもので、診断や治療方針の決定を代替するものではありません。

ステップ① 安全確認 — 局所の評価より先に

先輩PT・佐伯直人

まず確認するのは、肩の評価より前の話。レッドフラッグだ。

新人PT・水野あかり

安静時や夜間も続く痛み、原因不明の体重減少、発熱、がんの既往…でしたよね。

先輩PT・佐伯直人

そう。ここで大事なのは、「確認した」と「確認していない」を分けて記録すること。
陰性と未確認の違い陰性確認したが所見なし→ 可能性を下げる材料になる未確認まだ確認していない→ 判断材料にせず保留する
「陰性」と「未確認」の違い

新人PT・水野あかり

確認していない項目を「問題なし」にしない、ですね。

先輩PT・佐伯直人

この症例では、レッドフラッグの項目を一通り確認して、気になる所見はなかった。だから次に進める。もし聞けていない項目があれば、先に聞くか、「未確認」として残したまま進む。

ステップ② 候補を広げる — 病名を1つに決めない

先輩PT・佐伯直人

次は候補を広げる。肩の可動域制限と聞いて、思いつくものを並べてみて。

新人PT・水野あかり

凍結肩(肩関節周囲炎)と、変形性肩関節症…あと、腱板の問題でしょうか。

先輩PT・佐伯直人

いいね。実際の現場では、神経や血管、周辺の筋が関わる候補も頭に置いておく。たとえば四辺形間隙症候群(腋窩神経の絞扼)や、胸郭出口症候群、副神経麻痺も候補に入れて、「今の所見でどれが説明できて、どれが説明しにくいか」を見ていく。

新人PT・水野あかり

そんなに広げるんですか。

先輩PT・佐伯直人

広げるのは、最初の仮説に引っ張られないため。確証バイアスと呼ばれる、「最初の考えを支持する情報ばかり集めてしまう」落とし穴を避けるためだよ。

ステップ③ 支持する所見と、足りない所見を並べる

先輩PT・佐伯直人

ここが臨床推論の中心。候補ごとに、「この仮説を支持している所見」と「まだ確認できていない所見」を並べる。
候補支持している所見まだ足りない所見
凍結肩(肩関節周囲炎)他動外旋の著明な制限/全方向の他動制限/緩徐な発症他動外転・内旋の制限の程度/夜間痛
変形性肩関節症全方向の他動制限/他動外旋の著明な制限/緩徐な発症軋轢音・粗造感/関節裂隙の圧痛
四辺形間隙症候群(今の所見では支持が乏しい)四辺形間隙の圧痛/三角筋の筋力/腋窩神経領域の感覚

新人PT・水野あかり

あれ…凍結肩と変形性肩関節症は、支持している所見が同じですね。

先輩PT・佐伯直人

気づいたね。それが大事なところ。「全方向の制限」は、どちらにも当てはまる。つまり、今ある所見だけでは、この2つは分けられないんだ。

新人PT・水野あかり

じゃあ、どうすれば…。

先輩PT・佐伯直人

「足りない所見」の列を見る。ここに、2つを分けられる所見が書いてある。

ステップ④ 次に確認する評価を選ぶ

先輩PT・佐伯直人

次に確認する評価は、「どれを確認すると、候補が一番分かれるか」で選ぶ。この症例では、変形性肩関節症を支持する軋轢音や関節裂隙の圧痛。ここを確認すると、凍結肩との区別が進む。

新人PT・水野あかり

全部のテストをやるんじゃなくて、「分けられるもの」から確認するんですね。

先輩PT・佐伯直人

そう。評価の数を減らすためじゃない。1つの評価に「確認したい仮説」を持たせるためだ。
評価の優先順位づけの3ステップまず除外レッドフラッグ確認広く鑑別見落とされやすい病態も含める絞り込む実際の所見で優先順位づけ
評価の優先順位づけの流れ

ステップ⑤ 結果で候補を更新する

先輩PT・佐伯直人

では、確認した結果によって、考えがどう変わるか。
確認した結果考え方の変化
軋轢音・関節裂隙の圧痛がない変形性肩関節症を支持する材料が乏しくなり、凍結肩の確からしさが上がる
軋轢音・関節裂隙の圧痛がある変形性肩関節症の確からしさが上がる。凍結肩と併存している可能性も残る

新人PT・水野あかり

併存、あるんですね。

先輩PT・佐伯直人

58歳くらいの年代では、両方が共存することもある。だから「どちらか1つ」に決めつけず、結果を見ながら③に戻って並べ直す。この往復が、臨床推論の中身そのものだよ。

新人PT・水野あかり

評価した結果で考えが変わっていいんだ、と思うと気が楽になります。

先輩PT・佐伯直人

変わることが前提なんだ。変わる余地を残しておくために、候補を広げて、未確認を未確認として残しておく。

「そろそろ見立てを言っていい」の目安

新人PT・水野あかり

でも、いつまで③〜⑤を回せばいいんですか?

先輩PT・佐伯直人

目安は3つ。①レッドフラッグを確認していること。②複数の候補について、鑑別に使える評価をある程度確認していること。③いちばん有力な候補が、支持する所見を複数もっていて、2番手との差がはっきりしていること。

新人PT・水野あかり

この症例だと、凍結肩を支持する所見が3つそろっていて、2番手の変形性肩関節症との差もあるから…。

先輩PT・佐伯直人

そう。「見立てを述べてよい状態」になる。ただし、あくまで評価仮説。断定ではないし、未確認の点は残したままだよ。

ステップ⑥ 見立てと介入の方向性

先輩PT・佐伯直人

見立てを整理すると、こんな形になる。
評価仮説確からしさ理由
凍結肩(肩関節周囲炎)高い外旋優位の制限・全方向の制限・緩徐な発症が、関節包の拘縮のパターンと一致している
変形性肩関節症中程度全方向の制限は支持するが、軋轢音・関節裂隙の圧痛が未確認。確認後に上下する可能性がある
四辺形間隙症候群低い全方向の制限は説明しにくく、関連する所見も未確認

新人PT・水野あかり

確率の数字じゃなくて、「高い・中程度・低い」と理由なんですね。

先輩PT・佐伯直人

数字にすると、それが「当たる確率」だと誤解されやすい。大事なのは「なぜそう考えるか」と「何が確認できれば変わるか」の方。

先輩PT・佐伯直人

そのうえで、介入の方向性を組み立てる。外旋制限が中心なら、そこに働きかける徒手的な介入や、自宅でできる穏やかなストレッチ、動作の中で不良パターンを定着させないための指導、という組み合わせが考えられる。

新人PT・水野あかり

「ストレッチを強くやる」で終わりではないんですね。

先輩PT・佐伯直人

リスクも一緒に置く。夜間痛や安静時痛が強い炎症期に強いストレッチをかけると、炎症を強めることがある。その日の痛みの反応を確認して、翌日に痛みが残らない強度に調整する。糖尿病の合併があれば、長引きやすいことも念頭に置く。

流れで見ると、何が変わるのか

新人PT・水野あかり

こうして流れで見ると、「病名を当てる」ことよりも、「何が分かっていて、何がまだ分かっていないか」を見ているんですね。

先輩PT・佐伯直人

そう。結論が同じ「凍結肩」になっても、この流れを通って出した見立てと、一目見て決めた見立てでは、中身が全然違う。前者は、間違っていたときに「どこで見誤ったか」を辿れるからね。
場面流れを意識しないとき流れを意識したとき
最初の仮説そのまま結論にしてしまう「最初の仮説」として置き、候補を広げる
検査の選び方思いついた順に全部やる候補を分けられる評価から確認する
未確認の点「問題なし」として流れる「未確認」として残し、次の一手にする
見立てが外れたときどこが違ったか分からない支持・不足の整理を見直して修正できる

クリニカルシンカーではどう整理するか

新人PT・水野あかり

先輩、この流れを一人でやるのって、結構大変そうです。

先輩PT・佐伯直人

そうだね。だから、クリニカルシンカー(Clinical Thinker)のような臨床推論支援AIで、この流れを画面で見える形にする方法もある。今回の症例の流れは、アプリの実際の出力画面(肩の架空症例のデモ)を参考に書いたんだ。

新人PT・水野あかり

画面だと、どんなふうに見えるんですか?

先輩PT・佐伯直人

評価を入れるごとに候補が更新されて、候補ごとに「支持している所見」と「足りない所見」が並ぶ。次に確認すると鑑別が進む評価も示される。今回の③〜⑤の往復を、画面の中で回していくイメージだね。

新人PT・水野あかり

私が考えを整理するための、壁打ち相手になるんですね。

先輩PT・佐伯直人

そう。答えを出してもらうんじゃなくて、自分の考えの抜けに気づくために使う。診断を代替するものじゃないし、最終判断はセラピスト自身がするものだよ。
クリニカルシンカーは、理学療法士・作業療法士のための臨床推論支援AIです。診断を代替するのではなく、問診・仮説・評価方針・鑑別・リスク整理を支援し、臨床での思考過程を見える化します。

まとめ

臨床推論は「勘」ではなく、順番のある流れです。今回の肩の架空症例では、次のように進みました。

  • ① 局所の評価より先に、レッドフラッグを確認し、未確認は未確認として残す
  • ② 最初に浮かんだ病名を「仮説」として置き、候補を広げる
  • ③ 候補ごとに、支持する所見と足りない所見を並べる
  • ④ 候補を分けられる評価から、次に確認するものを選ぶ
  • ⑤ 結果で候補を更新し、③に戻る
  • ⑥ 見立ては確からしさと理由で示し、介入はリスクと一緒に組み立てる

大切なのは、結論が当たるかどうかより、「どこまで分かっていて、何がまだ分かっていないか」を自分の言葉で説明できることです。

なお、この記事の症例は架空のもので、画面の出力は未監修の試作データによるデモです。診断や介入方針の決定を代替するものではありません。

よくある質問

Q. 臨床推論の流れは、どの部位でも同じですか?

A. 基本の順番(安全確認→候補を広げる→支持と不足を並べる→次の評価を選ぶ→更新→見立て)は部位が変わっても共通して使えます。ただし、候補の中身や確認すべき評価は部位・病態ごとに異なります。この記事は肩の架空症例で流れを示したものです。

Q. 支持する所見が同じ候補が並んだときは、どう考えればよいですか?

A. 今ある所見だけでは分けられない状態です。「足りない所見」のうち、2つの候補を分けられるものを選んで確認します。この記事では、凍結肩と変形性肩関節症を分ける材料として、軋轢音・粗造感や関節裂隙の圧痛を例にしています。

Q. この記事の画面や推論は、実際のアプリの出力ですか?

A. 症例は架空ですが、流れと見立ての整理は、クリニカルシンカー(Clinical Thinker)の肩の架空症例デモの実際の出力画面を参考に書いています。デモは未監修の試作データによるもので、診断や介入方針の決定を代替するものではありません。

参考

  • Clinical Reasoning in Musculoskeletal Practice (Jones MA, Rivett DA)(運動器理学療法における臨床推論の考え方を扱う成書)
  • Clinical Reasoning in the Health Professions (Higgs J, Jensen GM ほか)(医療専門職の臨床推論全般を扱う成書)

CLINICAL THINKER

クリニカルシンカーとは

この記事のような「何から評価し、何を疑うか」の整理を、あなた自身の症例で行えるようにしたのが、 理学療法士・作業療法士のための臨床推論AI「クリニカルシンカー(Clinical Thinker)」です。

一流セラピストの臨床推論・思考プロセスをアルゴリズム化し、あなたの症例の「鑑別・評価の優先順位・介入の方向性」を整理します。妥当な答えしか返さない一般的なAIではなく、実際の臨床に近い答えを出すことをめざしています。 診断をするAIではありません。

350以上の施設のセラピストが、すでにクリニカルシンカーで臨床推論を使っています。

一般的なAIとの違い

土台になる知識

一般的なAI:インターネット上の幅広い一般知識

クリニカルシンカー:3,000回超のセミナーと、200名超の一流講師の知見を体系化

答えの傾向

一般的なAI:無難で、一般論にまとまりやすい

クリニカルシンカー:実際の臨床に近い、踏み込んだ推論をめざす

次に確認すること

一般的なAI:聞かれたことに答える

クリニカルシンカー:次に確認すると鑑別が進む評価を、理由つきで提案

※ 一般的な傾向をまとめたもので、特定の製品を評価するものではありません。

運営:一般社団法人セラピストフォーライフ

研修事業15年以上、セミナー3,000回以上、一流講師200名以上、延べ15万人。 15年かけて積み上げた知見が、クリニカルシンカーの土台です。

  • 赤羽根良和先生赤羽根良和先生
  • 北山哲也先生北山哲也先生
  • 石井慎一郎先生石井慎一郎先生
  • 上田泰久先生上田泰久先生
  • 瀧田勇二先生瀧田勇二先生
  • 吉田一也先生吉田一也先生

講師陣の一部です。

実際に使った方の声

改善につながった

TKA後屈曲可動域制限が強い症例への介入のヒントが得られ、改善してきている。

自信が持てるようになった

大腿骨転子部骨折後の疼痛が残る症例の疼痛の原因や裏付ける理由が整理され、自分の評価に自信を持てるようになった

気づきが得られた

手詰まりになったときに新しい視点が得られた

考え方の幅が広がった

膝術後の患者のリハビリで優先順位のつけ方、理論的な可能性の高い病態など、自分で抜けていた視点、苦手な視点も説明があり、臨床の考え方の幅が広がりました

先生と話をしているみたい

まるで先生と壁打ちしているみたいで、かなり勉強に役立っております。

やる気が出る

推論の方向性が自分が考えてたものと同じだったとしても、より深く考察されているので本当に勉強になります。また、それを以て勉強意欲の向上にも繋がります。

※ 匿名・個人情報を含まない範囲で、いただいた声を掲載しています。

7日間無料で試す(カード登録は不要)

医師の診断を代替するものではなく、最終判断は担当セラピスト・医師が行います。